HU915QEで100インチホームシアターを組んで3ヶ月たったレビュー
職業柄なのかスマホでのSNSのやりすぎなのか、近視が年々進行している。仕事や室内での生活には問題はないのだが、運転時はメガネが必要になるし、テレビがボヤけて見えるのがとても辛い。 それに抗うように、衰える視力に対してテレビの画面サイズを42インチ→65インチ→75インチと大きくしてきた。
そして衰えは進行し、さらなる画面サイズが必要になってきたと感じ始め、90インチ以上のものに置き換えることを考え始めた。 しかし今の市販のテレビは液晶パネルや有機ELパネルの都合なのか85インチが最大とあって、求めるサイズのものは手に入れることが難しいことを知る。 どうせ地上波はほとんど観ないしテレビである必要性がないため、テレビ以外にも選択肢を広げていった。
そこで予てから導入したかったプロジェクターを導入し、視力との戦いに挑むことにした。 せっかくなのでサウンド面も強化し、ぼくのかんがえたさいきょうのホームシアターを構築した。
目次
ぼくのかんがえたさいきょうのホームシアター
ずっとホームシアターには憧れがあったものの、これまでは部屋のレイアウトなどでうまくフィットするものが無く、妄想だけを重ねてきていた。 引っ越しの機会もあってうまく理想を現実に落とし込めそうだったので、5年間ほど温めていた理想像を書き出し構想を練った。
超短焦点4Kトリプルレーザープロジェクター
超短焦点でTrue 4Kでトリプルレーザーなプロジェクター!欲張りさんだから、全部盛りなんだ♪
超短焦点
プロジェクターといえば映画館のように視聴者の後ろ上方から映像を投影するものが一般的である。 光源からレンズを通して射出される小さな映像を大きなスクリーンに綺麗に投影するにはそれなりの焦点距離が必要となり、大画面用に短焦点レンズを載せたものでも1メートル以上の距離をスクリーンとの間に必要とする。
この設置距離によって様々な制約や問題が生まれる。 最も単純なものは、人や物がプロジェクターとスクリーンの間に介在して映像を遮ってしまう問題だ。今回は液晶テレビの置き換えということもあって、リビングルームでの利用を考えているため、行動が制限されてしまうことは避けたい。
そんな設置距離の問題を解消したプロジェクターが、ズバリ超短焦点プロジェクターだ。 英語でUltra Short Throwと書くことから、USTプロジェクターとも呼ばれる。 名前の通り超短焦点レンズを採用し、わずか数センチから十数センチ程度で映像を綺麗に投影できる。 その短い設置距離でも80インチから150インチの大画面サイズで投影できる製品も多く、令和を代表するホームシアターの形とも言える存在である。
USTプロジェクターでは人や物によって映像が遮られることがない強力な利点があるが、超短焦点ならではの欠点も抱えている。 一番の弱みが傾きに弱いという点だ。
USTプロジェクターは焦点距離が短いため、プロジェクター本体から照射される映像の距離との拡大率がとても大きい。そのため、わずか数ミリの本体の傾きがスクリーンに映る映像では数センチ数十センチといった単位で傾きのズレが生じてくる。 また、USTプロジェクターは下方から上方へ(天井設置の場合は逆)投影されるため、投影軸とは大きくずれた方向に映像を拡大する特殊な反射板とレンズが用いられていることで、このズレの修正が直感的ではなく困難を極める。
スクリーンなどの照射面の歪みも顕著になるのがUSTプロジェクターの特徴だ。 一般的なプロジェクターが水平方向に照射された映像を水平方向から視聴するのに対し、USTプロジェクターは下方から上方へ投影された映像を視聴することになる。 スクリーンにわずかなシワがあるとき、USTプロジェクターはシワ方向に沿って大きく画素がズレて映像が伸縮するため、水平方向から視聴すると極端に歪んで見えるのだ。
これらの欠点はいずれも設置をしっかり調整したり、プロジェクターの補正機能をうまく使ったりすれば解消できる部分であり、最大のメリットである「映像を遮らない利点」を享受できれば気に留めるほどでもない。
True 4K 0.66インチ DMD
4Kテレビでは光を映像に変換するLCDパネルや有機ELパネルが高解像度化し、3840x2160画素の4K画質を表現できるようになっている。 プロジェクターにおける4K画質というものは、コストや技術的観点からピクセルずらしという技術によって4K画質を作り出している。
DMD
© Hachikou from Wikimedia - CC BY-SA 3.0
プロジェクターの光源とレンズの間には、三原色を映像に変換する機械が存在する。 その機械はプロジェクターの方式によって様々で、
- 反射型液晶
- 透過型液晶
- デジタル・マイクロミラー・デバイス
などが存在する。
主流であるDLP方式のプロジェクターで用いられるのはデジタル・マイクロミラー・デバイス、通称DMDと呼ばれるコンポーネント。 光源からの光を鏡で反射させるため液晶を使うものと比べて減衰が少なく、より明るい映像が楽しめる。 明るさは正義なので、プロジェクター選びにおいてDMDを採用していることは譲れないポイントの一つである。
DMDは極小のミラー(マイクロミラー)が画素のように敷き詰められているデバイスで、三原色のそれぞれで各画素にどの色をレンズに通すかをミラーの傾きで選択する機能を持つ。 光源からの光を受けて、ミラーを動かしてレンズの方向に反射させたりさせなかったりを色ごとに行う。 例えばドイツ国旗🇩🇪を全画面に表示する映像を投影する時は次のような動作となる。
- 上3分の1はミラーを全てレンズとは違う方向に傾けてレンズに光を通さない(OFF状態)
- 真ん中3分の1は赤色の光が当たる時だけミラーをレンズ方向に反射するように傾けレンズから光を出す(ON状態)
- 下3分の1は赤色と緑色の光が当たる時にミラーをレンズ方向に反射するように傾けレンズから光を出す(ON状態)
これによって上から黒赤黄で塗りつぶされたフレームが描画され、各フレームごとに繰り返すことで映像が作り出される。 この仕組みが理解できると、DMDのマイクロミラーの数がすなわちプロジェクターの画素数になるというのがピンとくるだろう。 しかし4K画質となる3840x2160のマイクロミラーを搭載するDMDは現時点で市場に出回っていない。 そのため、4Kプロジェクターでは4K画質を作り出す必要があるのだ1。
画素ずらし
市場に出回っている4Kプロジェクターが搭載するDMDの画素数(ミラー数)は1920x1080が多くを占める。この1080p画質から2160p画質を作り出す技術が画素ずらし手法(ピクセルシフト)だ。 仕組みは簡単で、ピクセル(画素)が足りなければ増やせばいいという考えのもと、足りないピクセルの位置に画素をずらしたものを連続で投影するものだ。 子供騙しのようだが、人の視覚は映像を見る時は時間方向に対しては脳の補完が効くため、重ねて投影されたように知覚し4K画質として感じ取れる。
画素ずらしについて理解を深めたければ、次のページが参考になる。
4Kプロジェクターとその解像度を実現する技術とは | ベンキュージャパン
この画素ずらしには、ピクセルを斜め方向に画素ずらして画素数を縦横√2倍する方式と、上下左右にそれぞれずらして縦横2倍にする方式がある。 前者を半画素ずらし、後者を全画素ずらしなどと言ったりする。 1920x1080画素のDMDでこの画素ずらしを行うと、半画素ずらしでは2175x1527ピクセルの擬似4K、全画素ずらしは3840x2160のTrue 4Kの映像が投影される。 一見全画素ずらしの方が画素数が多く高画質だと考えがちだが、4回の画素ずらしをする分1フレームの画像を作るために4つの光が重ねて表示されるため、ボヤけて見えたり光が滲んで見えたりする製品も多い。
半画素ずらしで3840x2160を実現できれば現時点での最高の4Kプロジェクターとなるが、そんな要望を叶えてくれるDMDが一つ存在している。 DLP660TE だ。 0.66インチという比較的大きなパッケージに2716x1528画素のマイクロミラーを搭載しているため、半画素ずらしで3840x2160のTrue 4Kが投影できるのだ。 さいきょうのホームシアターを作るなら、DLP660TE搭載のプロジェクターしか考えられない。
トリプルレーザー光源
まずレーザーという単語の音の響きに感動してほしい。 感動しなかった人はこのセクションは読み飛ばしてもらっていい。
プロジェクターの心臓部とも言える光源は、古くは水銀ランプが使われており、今ではLEDとレーザーに置き換わろうとしている。 それぞれの特徴は下表の通り。
光源 | 水銀ランプ | LED | レーザー |
---|---|---|---|
明るさ | ⚪︎ | △ | ⚪︎ |
素早い起動 | △ | ⚪︎ | ⚪︎ |
低消費電力 | △ | ⚪︎ | ⚪︎ |
低価格 | ⚪︎ | △ | △ |
長寿命 | △ | ⚪︎ | ⚪︎ |
テレビの置き換えとしての利用を考えていることから、起動で待たされるのは論外。 値は張るものの、明るさと長寿命を両立できるレーザー光源を選ぶほかないことは明らかだ。
レーザー光源を選ぶと決めたら次は方式を考えないといけない。 レーザー光源の中には、カラーホイール方式とトリプルレーザー方式があるのだ。
カラーホイール方式はひとつの光源からの色を三原色に変換して投影するもので、水銀ランプでも用いられる歴史ある手法だ。 コストは低いが色の再現度が低かったり、光の滲みが出たりするといった欠点がある。
© Hachikou from Wikimedia - CC BY-SA 3.0
対してトリプルレーザー方式は、3つのレーザー光源を用意して三原色を別々の光源として搭載する方式。 ただでさえ高価なレーザーを3つも搭載するためハイエンドプロジェクターでしか採用されないが、さいきょうのホームシアターを作るならこれ一択。
100インチ ALR スクリーン
視聴距離と近眼の能力とを考え100インチのサイズがバランス良いと判断した。 前途の通りUSTプロジェクターにはスクリーンのシワは致命的なので、フレームにスクリーンをピンッと張ってシワを作らないUSTプロジェクター用のスクリーンに絞る。
そしてテレビ代わりとしての日常使いをすることから、明るい部屋や日中の陽が差し込む環境での利用にも耐えられるスクリーンが望ましい。 そんなスクリーンが存在するのかという疑問が湧くが、USTプロジェクター向けには「耐外光スクリーン」なるものがあるのだ。 英語ではAmbient Light Rejecting、ALRスクリーンと呼ばれるもので、USTプロジェクターの特性に合わせた加工がされている。
USTプロジェクターからの映像は下方から上方に向かって投影され、その映像がスクリーンに反射したものを水平方向から視聴する。 対してシーリングライトや太陽光などの環境光(Ambient Light)の向きは上方から下方である。 ALRスクリーンはその光の向きの違いを利用したもので、下方からの光を水平方向に反射しやすくし、上方からの光は反射しにく加工されている。
引用元: https://kakakumag.com/av-kaden/?id=19053
Dolby Atmos対応サウンドバー + ワイヤレスリア
最近どっぷりハマっているオブジェクトオーディオ。Apple Musicでは空間オーディオの曲ばかり聴いているくらいハマっている。 AirPods Proはもちろんのこと、Denonのサウンドバー DHT-S517を導入している。
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バランスが良くイネーブルドスピーカー搭載ともあって、Dolby Atmosのオブジェクトオーディオ感はすこぶる良い。 ただ、サラウンドといえば後ろからもドーン、というような古い凝り固まった聴覚をしているため、リアルなリアスピーカーも欲しくなってきた。 でも煩わしいケーブルの配線はしたくない。そんなニーズに応えてか、Dolby Atmos対応のサウンドバーに後付けでワイヤレスのリアを追加できる製品がいくつか発売されているため、さいきょうのホームシアターのためにオーディオシステムの変更をする。
実際に購入したもの
先に金額だけ記しておくと、合計734,400円でさいきょうのホームシアターを組むことができた。
LG HU915QE
プロジェクターはLG HU915QEを購入。 4K USTレーザープロジェクターはLG、XGIMI、HP、OPTOMAなど限られた会社から合わせて国内10製品ほどが発売されているが、トリプルレーザーとなるとほぼ一つに絞り込まれる。 去年までは旧世代品のHU85LSが唯一の欲望を満たす存在だったため、理想のプロジェクターだったその後継機を手に入れられて買っただけで満足感が高い。
購入価格はビックカメラで549,800円+ポイント還元でお買い上げ。いわゆる定価やメーカー希望小売価格というやつで、Amazonだと少し販売価格は下がっている。 実はこの製品、円安の今はとてもお買い得な製品でもある。
米国でのメーカー直販価格は$5,999.99なので、これを日本の希望小売価格と照らし合わせると1ドル91円で換算されているのだ。 購入時の為替レート1ドル135円で希望小売価格を計算すると約81万円となるし、執筆時の米Amazon.com販売価格$4,799.00と為替レート1ドル143円で計算しても68万円を超える。 このお買い得感に感動して、今でも注文明細書を見るだけで満足感がドバドバ溢れ出てくる。
HU915QE | プロジェクター | LGエレクトロニクス・ジャパン
中華ALRスクリーン
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ALR スクリーンは国内で販売しているものは相場よりやや高価で、特に値段に比例して高品質であるというようなのも見かけなかったため、AliExpressで購入した。 おまとめ購入値引きなどが他の製品と合わせて計算されていて正確な購入価格がわからないが、63,900円前後で購入した。 Fedexから諸費用で追加の4,000円を請求されたため、かかった費用は68,000円ほどとなる。
Denon Home Sound Bar 550 + Denon Home 150
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Dolby Atmos対応でワイヤレスリアにも対応するサウンドバーは片手で数えられるほどしかない。 中でも2020年発売のSonos Arcの後継品を狙っていたが発売されず。新製品が出そうな予感を抱えながら型落ちのを買う勇気は出なかったので、聴き慣れたDenonの音作りを信用してDenon Home 550をチョイスした。 これにワイヤレスリアスピーカーとしてDenon Home 150を2台購入。 総じて63,000円と26,800円x2で116,600円。
一つ誤算だったのが、イネーブルドスピーカーがDenon Home Sound Bar 550にはなかったこと。 てっきりDHT-S517と同様に搭載しているものだと思い込んでいたが、実際は仮想的に高さ方向の音を出す製品だった。 この一点においてはSonos Arcにしておけばよかったかもと少し後悔した部分でもある。
ホームシアター設営
100インチALRスクリーン設置
最初にスクリーンを設置し投影する位置を決める。 この設置したスクリーンの高さによってプロジェクターの設置の高さも決まる。 高さ調整のできないテレビ台などにプロジェクターを置くつもりであれば、事前にマニュアルに記載のスクリーンサイズと投影高の計算をして高さを決めておく。
主な設置作業はというと、大きな箱に分解されたフレームと丸められたALRスクリーンが入っているので、マニュアル通りに金具を組み付けていくだけだ。 100インチの横幅は両腕を広げた大きさよりもデカいが、成人男性一人でも組み立てられた。 壁にかけるときに苦労したので、二人での作業をおすすめする。
プロジェクター本体
本体を取り出してテレビ台の上に置き、電源を接続すれば設置はほぼ完了。 まずは本体上部に隠れているフォーカスダイヤルを回してピントを合わせ、本体を少しずつ前後に動かしながら投影サイズの調整をする。 最初は映像が台形や菱形に投影されているので、本体を左右にずらしたり回転させたりして形を方形に近づけていく。本体の足の長さを調整するのもポイントとなる。 完璧にスクリーンに16:9の映像が投影できれば補正は必要ないが、大抵はどこかが歪んでいるので、9または15ポイントエッジ補正をかけて美しい形に整える。
サウンドバー + ワイヤレスリア
これも接続は簡単で、電源とHDMIケーブルを接続してアプリでWi-Fi接続を行うだけだ。 設置位置は壁にかけてみたり下に置いてみたりと色々と試行錯誤したものの、最近はプロジェクター本体の上に置いている。 Denon Home Sound Bar 550がちょうど映像を邪魔しない高さでプロジェクターの横幅よりも小さいため、ここに置いてくださいと言わんばかりのスペースとなっている。
ワイヤレスリアスピーカーは耳の高さに置くようにと説明があったため、無印良品の壁に付けられる家具棚でソファに座ったときに耳の位置にくる高さに棚を設置し、そこに置く形とした。
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3ヶ月間使ってみてのレビュー
★★★★★ 4.7
プロジェクター本体
映像面では期待を裏切ることのない画を映し出してくれている。 この美麗な映像体験を文字の羅列で伝えるのは難しいのであまり多くは語れないが、ミドルレンジのプロジェクターとは比較にならないクオリティを感じられる。 家庭でプロジェクターを常用していたのは10年以上昔だが、この10年でここまで高色域で高精細なものが家で観られる時代になったのかと技術進歩の偉大さに感動した。 店頭で試写しているところもあるようなので、ぜひ適当なインターネットの評論を鵜呑みにせずその目でTrue 4KでトリプルレーザーでDLPの凄みを体感してほしい。
プロジェクターでスクリーンに映画を投影してみるシネマ体験が特別なものになるようにと、FILMMAKER MODEに対応しているのもLGのハイエンド製品ならではである。 この機能によってプライムビデオなどで映画を再生していることを検知すると、映像モードやフレームレートをコンテンツに合わせ映画館で上映する映像品質に近づけてくれるのだ。 作品が本来持つ魅力を引き出してくれ、映画を観るという時間そのものの質を高めてくれる。
これまで液晶テレビでは数時間の視聴で眼精疲労が溜まる傾向にあったが、不思議とプロジェクターに入れ替えてからは疲れを感じたことがない。 どういった違いによるものなのかはわからないが、これだけ明るくデカい映像なのに連続で映画を鑑賞し続けられるので眼に優しいのかもしれない。
テレビの置き換えとしては、チューナーがないので地上波は視聴できないが、その代わりにリモコンからNetflixやプライムビデオがワンボタンで起動できるようになっている。 おかげでNHK受信料の支払いとも縁が切れ、配信サービス中心のライフスタイルへと変化したが、慣れてしまえばこれがとても快適に感じる。 なんだったらHuluもParaviもアプリストアにあるので、地上波コンテンツが見たければ課金してCM無しの作品を堪能できるのでより生活が豊かになる。 起動時間もリモコンからパワーオンして10秒程度で映像が映り、少し古いテレビくらいの感覚で許容できる範囲である。
機能面では、搭載ソフトウェアが不便で重いAndroid TVではなくwebOS 6.0搭載というのもポイントが高い。 プリインストールアプリも充実していて、Netflix/プライムビデオ/Disney+とサブスクを契約している3社が全て最高品質2で視聴できる。 加えてアプリストアにあるApple TV+のアプリでは、iTunes Storeで購入・レンタルした映像も最高品質で視聴できる。 これまでこの4社のコンテンツを最高品質で視聴するにはApple TV 4Kが必要だったが、その機能がまるッと搭載されていて高い利便性とお得感がある。
地上波の代わりに使いたかったABEMAはLGのテレビ/プロジェクターにはアプリを提供していないようで、アプリストアには表れなかった。 ただ、このプロジェクターはAirPlay 2に対応しているので、【推しの子】を始めとする地上波同時最速配信をAirPlayで映し出すことができる。 HomeKitにも対応していて、同じWi-Fiに繋がったiPhoneやiPadなどからリモコンのカーソル操作や音量調整、電源のON/OFFができるのも嬉しいポイント。 HomePodがあれば外出先からもプロジェクターの操作ができたりもするので、ほぼApple TVのような使い方ができてしまう。
ゲームの機能では、FPSなどに向いた映像の調整ができるゲームオプティマイザがあるが、最近はFPSとは無縁な生活を送っているので効果のほどは確認できていない。 それよりもゲームに役立つと感じたのは、内臓ブラウザとプロジェクターの映像をPicture by Pictureで左右に半分ずつ表示できる機能だ。 半分になっても50インチの画面サイズなので、お気に入りのSNSで交流したり攻略サイトを見たりしながらゲームを快適に進められる。
プロジェクター本体のスピーカーは2.2ch(40W)で、ステレオにしては良い音が出ていると感じるものの、これを常用したいとは感じないものだった。 Bluetoothや光端子で接続した同社のスピーカーと組み合わせてワイヤレスリアを追加できるので試してみたものの、まとまらない音でお世辞にもサラウンドとしての質は良いものではなかった。
ハイエンドなだけあっていいことづくめだが、明るく綺麗な映像とのトレードオフで発熱が大きい。 プロジェクター本体に近づくとじんわりと温もりを放っていることを感じる上、本体向かって右側から出る排気熱は実測で35℃を超えていた(室温25℃時)。 十分に換気されている部屋では室温の上昇は僅かに留まっていたが、HISENSEの75インチ液晶テレビ以上の熱源となっていることは間違いない。 夏場は冷房性能などにも悪影響を与えかねないが、冬場は映像も観れる暖房器具として一石二鳥だ。
ALRスクリーン
耐外光という言葉に偽りなしというのを実感した。 これは晴れた休日の昼間に室内灯を全てONにして明るくした部屋で動画を流している状態をiPhoneで適当に撮ったもの(合成・調整なし)。 目の前に鮮やかで明るい映像がしっかりと投影されていて、プロジェクターの性能もさることながら、ALRスクリーンによって環境光が映像の邪魔をしていないことが見て取れる。 肉眼ではもっと明るく見えており、プロジェクターで綺麗に投影するには周りを暗くしないといけないという常識を覆され感動を覚えるほどだ。
ベゼルが1cmととても薄いのも相まって、映像の迫力を何倍にも増していて没入感が小規模映画館を軽く超えていると感じた。 表面加工がデリケートなので定規などの固いものが擦れてしまうと傷ができてしまうが、その程度であれば映像には影響を与えないようだ。
Dolby Atmos + リアサラウンド
期待のDenon Home Sound Bar 550とDenon Home 150の組み合わせは想像以上に満足感ある音を体験できた。
Disney+で映画をいくつか観てみたが、Dolby Atmosに関してはDHT-S517と比較して音の物理的な空間が広がったように感じた。 後方の迫力が増すのはいわずもがな、真横などの音もサウンドバーとリアスピーカーでうまくその位置から聞こえるように音を作ってくれていて広さが表れている。
後ろ2つのスピーカーが低音もよく出してくれることから、イネーブルドスピーカーで作られていた後方の音とはまた違った迫力が追加されていた。 イネーブルドスピーカー非搭載の影響で、7.1.4chのDobly Atmosデモでは上配置のスピーカーから聞こえるような感覚は減少していたが、高さを感じることはできた。 高さ方向の音情報がゼロになるんじゃないかと心配していたが、多少は再現できていたことに少し安堵した。
5.1/7.1サラウンドの体験では、リアから音がしっかり届くのはサラウンドで欠かせない要素であることを改めて理解した。 DHT-S517もサラウンドとしての音の空間の作り方は良かったのだが、イネーブルドスピーカーで作り出す後ろからの音には弱さがあった。 後ろから物理的に音が届くという現実の音に近い感覚は、ゼルダの伝説をプレイしている時に臨場感や没入感を最大限に引き上げてくれる。 Splatoon 3で後方からの敵の音に瞬時に反応できるようになった変化は、全身への音の伝わりがよくなっていると実感した。
音質以外の面では小さな不満があり、一番のマイナスポイントはSpotifyやAWAなどの単体再生に対応しているのにApple Musicは非対応なところ。 加えて両製品ともマイクが搭載されているのに自動チューニングが搭載されていないこと。 どちらもHEOSというアプリがしょぼいために機能不足となっている。 Sonos ArcはApple Musicの空間オーディオを単体再生できる上に、iPhoneのマイクで(Sonos Eraは内蔵マイクで)自動チューニング(TruePlay)ができるとあって、隣の芝生が青くみえて不満が湧いている。
まとめ
ぼくのかんがえたさいきょうのホームシアターを作ると言うからには、最低100万円はかかると覚悟していた。 結果は予算を余らせてこのクオリティを実現できたことに少し驚いている。 本格的にアンプやスピーカーを配置したり音の反響にまでは拘らない、いわゆるリビングシアターにしては高価格帯ではあるが、十分に100万円超のホームシアターと太刀打ちできるレベルにあると感じる。
当初の目標であった近眼との勝負では、概ね期待通りという結果だった。 フルHD画質のコンテンツは裸眼でも快適に視聴できたのだが、4K UHD画質では僅かにぼやけて見えるところがあった。 テレビと違ってプロジェクターはスクリーンの入れ替えで画面を大きくできるので、ゆくゆくは120インチのスクリーンに取り替えることになるだろう。
まだまだ近眼と大画面との戦いは終わることを知らない。
Footnotes
-
JVCはDMDではなく反射型液晶技術として4K対応のチップを用いている 反射型液晶パネルD-ILAデバイス | 産業用部品 | JVC ↩
-
4K UHD/Dolby Vision,HDR+/Dolby Atmos 対応コンテンツの視聴が制限されず制約がない状態 ↩